「いくつになっても体は変わる」ピラティスで、崩れた私の姿勢の常識と、一生歩くための準備

昔から運動神経が良く、体育の時間には見本を頼まれることもありました。
大人になってからもテニスやバレーボールを楽しみ、
ピンヒールを履いて歩くことに、何の疑いも持っていませんでした。

──だからこそ、気づいていなかったのだと思います。
「私は、自分の呼吸をほとんど感じていなかった」ということに。

60歳を過ぎ、膝の違和感をきっかけに始めたピラティスで、
私の身体は、思っていた以上に“固まって”いました。

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ピラティスで突きつけられた現実。「姿勢を作ろうとして、呼吸を失っていた私」

ピラティスを始めて、まず突きつけられたのは
「呼吸ができない」という現実でした。
「息を背中に入れてください」と言われても、全く意味がわかりません。

仰向けに寝てポーズをとれば腰が反り、
お腹に力を入れれば「そこじゃない!」と指摘される。


背中の骨を一つずつ動かす「ロールアップ」にいたっては、
背中が板のように固まったまま起き上がる、名付けて「硬直アップ」状態。

インストラクターの方に「ある意味すごい」と苦笑いされるほど、
私の身体はガチガチに固まっていたのです。

なぜ不調が続くのか?長年の「身体の癖」が積み重なった悲鳴に気づく

「このままではいけない」と一念発起し、
仕事の行き帰りも呼吸の練習を続けました。


ある時、ついに背中がミシミシと動き、深い息が入るのを感じた瞬間。
そこから、私の身体の「真実」が見え始めました。

  • 骨盤のねじれ: 足を組む癖とピンヒールによる反り腰。
  • PC作業による前肩: 老眼も手伝って顔が前に出て、顎が上がった巻き肩。
  • 筋肉の不均衡: 動かせる筋肉(アウター)だけで無理やり動き、使っていないインナーマッスルは弱り切っていた。

「私の身体、ひどすぎる……」 そう痛感しましたが、呼吸を意識し続け、
少しずつ「癖」を解いていくと、驚くべき変化が現れました。
膝の痛みが消え、O脚気味だった脚がまっすぐになってきたのです。

「まだ、直せる。いくつになっても、やればできる」

その感動が原動力となり、私は60代でインストラクターの資格を取得。
副業として教室を始めるまでになりました。

姿勢改善に正解はない。誰一人として同じではない「身体の癖」の整え方

その後、私はインストラクターの資格を取得し、副業で念願の教室を始めました。
多くの方の身体を拝見するようになり、気づいたことがあります。
それは、「全く癖がない人なんて、一人もいない」ということでした。

レッスンに来られる方は、それぞれに異なる「声にならない身体の悲鳴」を抱えていました。

  • 骨盤がガチガチに固まり、動かそうとしても腰ごと動いてしまう人
  • 綺麗なポーズを作ろうとして、つい力任せに筋肉を固めてしまう人
  • そもそもインナーマッスルが弱く、身体の支えがグラグラしている人
  • 足首やお尻が硬いために、膝や腰に負担をかけてしまっている人

不調の原因は人それぞれですが、共通しているのは
「自分の癖に気づいていない」ということ。


だからこそ、私は丁寧に向き合いたいと思い、
一度に見るのは3人までが限界だと感じていました。


固まっている筋肉をどう柔らかくし、弱っている筋肉をどう目覚めさせるか。
生徒さんと一緒にその「正解」を探す時間は、私にとっても大きな学びでした。

自律神経にも影響する「力み」。怒りを手放して身体を信頼するということ

ピラティスと向き合う中で、
私はある大きな「心の癖」にも気づかされました。
現役でバリバリと仕事をしていた頃の私はいわば「怒り」を燃料にして生きていた気がします。
自分を鼓舞し、周囲に負けないよう気を張り、
その強いエネルギー(外側の力)で身体を動かしていました。

けれど、ピラティスが教えてくれたのは、その正反対の世界でした。
力めば力むほど、呼吸は浅くなり、インナーマッスルは眠ってしまいます。
「頑張る」のではなく「緩める」。
外側の筋肉で無理やりコントロールするのではなく、
内側の微細な感覚を信じて身を委ねる。

「力まなくても、私の身体はちゃんと動いてくれるんだ」 そう心から自分を信頼できたとき、
不思議とあれほど強かった怒りのエネルギーは消え、
代わりに深い穏やかさが訪れました。
身体の癖をほどくことは、心の力みをほどくことでもあったのです。

▶身体と心の関係についてはこちらで書いています。

▶また、身体の内側の関係はこちら。

一生自分の足で歩くために。リハビリで再認識した「インナーマッスル」の力

現在は病を経て、リハビリという新たなステージで自分の身体と向き合っています。
レッスンをしていた頃、多くの方の「癖」を見てきました。
完璧な人なんて一人もいません。
大切なのは、自分の癖を知り、どうアプローチするかです。

今、改めてリハビリの中でピラティスの重要性を噛み締めています。
呼吸筋(インナーマッスル)という「内側の土台」を整えることは、
表面的な筋トレよりもずっと深く、私たちの生命力を支えてくれます。

自分の癖を知り、少しずつ整えていくこと。
それは何歳からでも始められます。たとえ、80歳になったとしても。

呼吸を取り戻すことは、筋肉を鍛えることではなく、
自分の身体を、もう一度信じ直すことなのです。


ピラティスや呼吸と姿勢の関係についてはこの記事で扱っています


姿勢や呼吸がうまくいかないのは、あなたの努力不足ではありません。
身体が安心して動ける条件が、まだ整っていないだけです。
まずは入口の記事から、呼吸と身体の土台を作り直してみてください。

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、40代からのしなやかな心身を作るために、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。

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