疲れた日の夜、明日の自分へ引き渡すもの。眠れない夜の「バトンタッチ」の儀式

「明日も早いのに、なかなか寝付けない」
「疲れすぎていて、かえって目が冴えてしまう」

そんな夜、私たちはつい時計を眺めては「早く寝なきゃ」と自分を追い込んでしまいます。
けれど、眠りは意志の力で無理やり手に入れられるものではありません。
焦れば焦るほど身体は固まり、明日の自分を助けるための休息は、遠ざかるばかりです。

かつての私は、眠ることさえも「戦い」のように捉えていました。
でも、病を経て身体の回復メカニズムと向き合う中で、一つの大切なことに気づいたのです。

夜に私たちがすべきなのは、無理に眠りに就くことではなく、
「今日という一日を丁寧に精算し、明日の自分にバトンを渡すこと」

今の自分がすべてを解決しようとしなくていい。
ただ、明日の自分が少しだけ軽やかに目覚められるように、
ほんの数秒だけ身体の「鎧」を脱がせてあげる。
そんな「引き渡しの儀式」を持つだけで、夜の時間はもっと穏やかなものに変わります。

今回は、完璧主義を横に置いて、
疲れた夜にこそ試してほしい「明日の自分へのバトンタッチ」についてお話しします。

目次

「早く寝なきゃ」という焦りが、一番身体を硬くする

疲れているときほど「明日が辛いから早く寝なければ」と自分を追い込んでしまいがちです。
けれど、眠りは意志でコントロールできるものではありません。

「寝る」ことにフォーカスするのを一度やめてみませんか。
大切なのは、明日の朝、目覚めた瞬間の自分が「あ、少し楽かも」と思えるように、
今の自分がほんの少しだけ準備をしてあげること。それだけで、夜の過ごし方は変わります。

明日の自分を助ける、3つの「小さな引き渡し」

1. 【内臓の休息】腸を頑張らせない


疲れた日の夜は「戦闘モード」が解けず、ストレスを感じた脳が報酬(満足感)を求めて、
腸に刺激的なメッセージを送り込みます。
夕食に味の濃いものや脂っこいものが欲しくなったり、お酒を飲みたくなったりするのは、
身体の自然な反応でもあります。

けれど、そこで腸を酷使してしまうと、翌朝の身体はさらに重くなってしまいます。
明日の自分のために、食事の量を少し減らし、消化の良いものをゆっくり口にする。
そんな「内臓への思いやり」が、一番の休養になります。

私も数年前まで、疲れた日に限ってビールが飲みたくなり、アルコールの力で眠ろうとしていました。リラックスしようとして飲んだお酒は、更に自分を疲れさせていたのです。

2.【視覚の片付け】スマホを置き、脳の「残業」を終わらせる


情報の波を追いかけている間、脳はまだ仕事モード(戦闘態勢)のままです。
明日の朝、頭が重くならないように、寝る30分前にはスマホを置く。
これだけで、脳というネットワークの負荷を明日に持ち越さずに済みます。
光は、今日の終わりを身体に伝えるスイッチです。

「今日はここまで」という時間を、少し早くしてみましょう。

私も気づけば11PMを回っていたというほど、夢中になってPC作業をすることがありました。
やはりそんな日は、寝つきが悪いのです。

最近では自分で時間を決めて、「今日はここまで」を
実行しています。
明日の自分がつらくなるのはもっと嫌だから。

3. 【お腹と背中の解放】「鎧」を脱ぎ、明日のための空気を届ける

鎧は重いので、肩やお腹の表面の力を目いっぱい使っています。
「よっこらっしょ」と脱いで、縮こまった筋肉を開放させてあげる事です。

布団に入ったら、おへそを縦に伸ばすイメージで、お腹の表面(腹直筋)の力を抜いてみてください。
今日一日、あなたを守ってくれた「表面の鎧」を床に預けるのです。
もし寝付けなくても大丈夫。

ただ横になったまま鼻から吸って、
背中の後ろ側をふっくらと膨らませてみてください。
肩の力が抜け、狭くなっていた身体に「空気が一通」届く。
その一呼吸が、明日の内臓ネットワークを繋ぐ「予約票」になります。

▶動の瞑想という考え方でバトンタッチができることを書いています。

明日の自分は、今日の自分とは別の人間

リハビリ生活で私が学んだのは、身体は寝ている間に勝手に修復してくれるという、神秘的な力でした。
今の自分がどんなに疲れていても、明日の朝の自分は、少しだけ新しくなっています。
元気なころは気づかなかった、ほんの小さな変化を感じられる喜びもあります。

「今の自分」がすべてを解決しようとしなくていい。
明日の自分を信頼して、バトンを渡す。
「今日はここまで」「明日の私、あとはよろしくね」と、心の中でつぶやくだけでも、それは立派な整えです。

完璧じゃなくていい。数秒の「誠実さ」があればいい

パジャマに着替える、白湯を一口飲む、背中に息を入れる。
何一つ完璧にできなくても、自分を責めないでください。
むしろ、そんなに疲れるまで頑張った自分を「お疲れ様」と労ってあげましょう。


ほんの数秒、身体を緩める時間を自分に差し出す。
その誠実さがあれば、明日の朝のあなたは、きっと今のあなたに感謝してくれるはずです。

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プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、40代からのしなやかな心身を作るために、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。

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