人はなぜ泣くのか|涙と呼吸、自律神経の関係

泣くことは弱さではなく、身体が安心へ戻ろうとするときに起こる自然な反応でもあります。

人はなぜ泣くのでしょうか。
悲しいときだけでなく、ほっとしたときや、
理由がはっきりしないのに涙が出ることもあります。
涙は感情の表現と思われがちですが、
実は呼吸や自律神経とも深く関係しています。

涙は「感情の表現」と思われがちですが、
身体の中ではその前に、
呼吸と自律神経の大きな変化が起きています。

実は、涙は
心だけのものではなく、
身体が回復しようとするときの反応でもあります。

この記事では、
人が泣くとき身体の中で何が起きているのかを、
呼吸と自律神経の視点からやさしく見ていきます。

目次

人はなぜ泣くのか|涙は感情だけのものではない

涙というと、
悲しいときに流れるものと思われがちです。

けれど、私たちは

嬉しいとき
安心したとき
強い緊張がほどけたときにも涙を流します。

これは、
涙が単なる感情の表現ではなく、
神経の調整反応でもあるからです。

人の身体は、
強い緊張や感情の波が起きたあと、
元の落ち着いた状態へ戻ろうとします。

涙は、
その「戻る過程」で現れることが多いのです。

涙には3種類ある

実は、涙にはいくつかの種類があります。

基礎涙(きそるい)

普段から目を守るために分泌されている涙です。
目を乾燥から守り、角膜を保護する役割があります。

反射涙

玉ねぎを切ったときや、
煙や刺激が目に入ったときに出る涙です。
目を守るための反射反応です。

感情涙

悲しみや安心、強い感情のときに出る涙です。

この感情涙は、人間特有のものといわれています。

つまり涙は、
感情と神経の働きが結びついた
とても人間らしい反応なのです。

泣くとき、呼吸はどう変わる?

泣くときの呼吸には
特徴的なリズムがあります。

それは短く吸い、長く吐くという呼吸です。

泣いているとき、
「ひっ…」と吸い込み、
「うう…」と長く吐く呼吸になります。

この呼吸は、
自律神経の中でも副交感神経を働かせる呼吸です。

副交感神経は、
身体を休ませたり、
安心の状態に戻す神経です。

つまり涙は、
呼吸を通して
身体を落ち着かせる方向へ働いているとも言えます。

涙と自律神経の関係

強い感情や緊張があるとき、
身体では交感神経が強く働きます。

これは、
身体が踏ん張っている状態です。

そのあと、
呼吸が変化し
長く息を吐くようになると、

迷走神経を通して
副交感神経が働き始めます。

すると

心拍が落ち着く
筋肉の緊張がゆるむ
身体が安心へ向かう

という変化が起こります。

涙は、
この 自律神経の切り替えの中で起きる反応
とも考えられています。

泣いたあと、身体が軽くなる理由

泣いたあと、
少し身体が軽くなる感覚を
経験したことがある人も多いでしょう。

これは呼吸が大きく動いたこと、
神経の緊張がほどけたことが関係しています。

涙を流す過程では、
ストレスに関係するホルモンが下がり、
安心に関係する物質(オキシトシンなど)が
働きやすくなるとも言われています。

そのため、
泣いたあとには、少し呼吸が深くなる
身体の力が抜ける、という変化が起きやすくなるのです。

小さな体験の章

実は私自身、
昔は「泣くことは弱いこと」だと思っていました。

感情を表に出さないこと。
自分で気持ちをコントロールすること。

それが大人のセルフコントロールだと
思っていたのです。

だから、
泣きそうになると
ぐっとこらえる癖がありました。

けれど、
身体の出来事をきっかけに、
少し考え方が変わりました。

感情を抑えることだけが
強さではないのかもしれない。

身体の中に
言葉にならないものが
溜まっていくこともあるのかもしれない。
そんなふうに感じるようになりました。

その頃から、「ちゃんと泣かないと
身体が壊れてしまうのではないか」そんな思いが
どこかに生まれました。

「ちゃんと泣かなきゃ」と思うこともある

涙が出そうになるとき、
「ちゃんと泣いた方がいい気がする」と
感じる人もいるかもしれません。

感情は出した方がいい。
泣いた方がすっきりする。

そんな言葉を聞いたことがある人も
多いと思います。

実際、涙は
呼吸を通して身体を落ち着かせる
回復の反応でもあります。

泣くときの呼吸は、

短く吸い
長く吐く

というリズムになります。

つまり、泣くことは
身体が大きく息を吐く行為でもあります。

呼吸が大きく動くことで、
神経の緊張がゆるみ、
身体は安心の方向へ戻ろうとします。

だから身体のどこかで、

「泣いた方がいいのではないか」
「ちゃんと泣かなきゃ」

と感じることがあります。

でも、涙が出ないからといって
身体が回復できないわけではありません。

泣くことも、
泣かないことも、
どちらも身体の自然な選択です。

大切なのは、呼吸が止まり続けないこと。

呼吸が通り始めれば、
身体は少しずつ安心へ向かっていきます。

でも、泣けない人もいる

ただ、すべての人が
涙を流せるわけではありません。

長い時間、感情を抑えてきた人や、
頑張り屋さんほど、
呼吸を止めて踏ん張る癖
がついていることがあります。

感情が出る前に、

息を止める
胸を固める
身体で踏ん張る

そんな反応が起こるのです。

その場合、涙が出ない代わりに

胸が苦しくなる
呼吸が浅くなる
喉が詰まる

といった感覚が出ることもあります。

泣かなくても身体は安心に戻れる

本来、涙は
身体が安心へ戻ろうとするときの自然な反応です。

けれど

人前では泣けないとき
仕事中のとき
もう癖で涙が出ないとき

そんな場面もあります。

そのときに大切なのは、
無理に泣くことではなく

呼吸を通して身体を落ち着かせることです。

呼吸が戻れば、
身体は少しずつ安心の方向へ動き始めます。

呼吸は「終わり」を届ける働きもある

呼吸には、
身体を動かす働きだけでなく、
状態を終わらせる働きもあります。

強い緊張や感情のあと、
人の呼吸は自然に長く吐く呼吸へ変わっていきます。

これは、
身体が「もう大丈夫」と感じ始めたときに
起こる呼吸です。

泣くときの呼吸も、
まさにこの形になります。

短く吸い、
長く吐く。

その呼吸を通して、
身体は緊張をほどき、
安心の状態へ戻ろうとします。

涙は、
その過程で現れる
身体の静かなサインなのかもしれません。

呼吸が終わりを届ける仕組みについてはこちら

まとめ|涙は身体が回復しようとするサイン

泣くことは弱さではありません。
泣かないことも冷たさではありません。

涙が出るときは、
それも身体が回復しようとする自然な反応です。

泣きたいときは、泣いていい。

けれど、
涙が出ないときや、
人前で泣けないときもあります。

そんなときは、
呼吸を通して身体を落ち着かせる方法もあります。
回復の道は、ひとつではありません。

泣いてもいい。
泣かなくてもいい。

呼吸が通っている限り、
身体は少しずつ安心へ戻っていきます。

感情と身体のシリーズ

感情は、心だけで起きているわけではありません。
呼吸・姿勢・自律神経など、身体の状態と深く関係しています。

このテーマをもう少し知りたい方はこちら

・感情は身体のどこで感じている?

安心とは何か?

身体が安心したときに現れるサイン

泣きそうになるときの対処法

感情をコントロールしなくていい理由

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、40代からのしなやかな心身を作るために、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。

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