低気圧の日に深呼吸がつらくなる理由|身体にこもる圧と呼吸の整え方

Breath 01 | まず、一度だけ吐いてみる

吸わなくていい。ただ、全部出す。

読み進めるのは、そのあとで。


どうでしたか。吐き切った瞬間、お腹や背中の奥に、かすかな「芯」のようなものを感じませんでしたか。
それが今日の話の出発点です。

天気予報アプリを開いて、明日の低気圧マークを見た瞬間、もうため息が出る——そういう日の呼吸、実は逆から始めた方がいいんです。
そう聞いても、すぐには意味がわからないと思います。
でも最後まで読んでもらえれば、次の雨の日がちょっと変わるはずです。

ポテトチップスの袋を山の上に持っていくと、パンパンに膨らみますよね。
外の気圧が下がると、袋の内側が相対的に「高圧」になって押し広げるからです。
似たようなことが、低気圧の日の私たちの身体でも起きています。
身体は密封されているわけではありませんが、
体液や組織が内側からじわじわと膨らもうとしています。
頭が重い、背中が張る、なんとなくぼんやりする——その感覚の正体は、物理です。意志の弱さじゃない。

では、その「膨らみ」を身体はどう扱えばいいのか。そこに、呼吸が深く関わってきます。


目次

「前がつながっていない肋骨」が、なぜあるのか

肋骨は12対あります。多くは前方で胸骨とつながっていますが、
下から2本——11番と12番だけは、前方がどこにもつながっていません。
宙ぶらりんで終わっています。解剖学では「浮遊肋骨(Floating Ribs)」と呼ばれ、
「退化した骨の名残」とされることもあります。

でも、ちょっと待ってほしいのです。

設計者の視点で考えてみるとおもしろいかもしれません。
コストをかけて骨を作っておいて、前を固定しないのは、固定しないことに意味があるのです。

浮かせた理由

横隔膜は胸郭の底面に張りついて、息を吸うたびに下へ・外へと広がります。その広がりを妨げないために、下部肋骨は「逃げられる」必要がある。呼吸のたびにわずかに開き、圧が高まれば逃がす
——11番・12番肋骨は、身体の中に組み込まれた気圧調整バルブという感じなのです。

そのバルブが固着すると、横隔膜の動きが制限されます。
横隔膜が詰まると、呼吸は自然と胸の上部だけで行われるようになる。
それは自律神経にとって「緊張せよ」という信号で、身体は戦闘モードから抜け出せなくなります。
気圧が少し変わるだけで「今日はもうだめだ」となるのは、バルブが閉じているからかもしれません。


背中の下、動いていますか?

Breath 02 | 背中に手を当てて、息を吸ってみる

椅子に座って、背中の下——腰と背中の境目あたりに、軽く手を当ててください。
そのまま、ゆっくり息を吸う。

手に触れている肋骨、動きましたか?

動いた人は、バルブが生きています。動かなかった人、感覚がよくわからない人——そこが固まっています。悪いことではなく、これから動かせばいいだけです。

固まりやすい人に共通するのは、「広げよう」と力を入れることです。
でも、固まった肋骨を無理に広げようとすると、身体は防衛反応を起こします。
先に「縮める」方向に動かすと、筋肉や筋膜が「あ、動いていいんだ」と学習して、
はじめて自然な弾力が戻ってくる。
ピラティスで「肋骨を閉じる」動作をよく行うのは、こういう理由があります。


低気圧の日は「吐く」、高気圧の日は「吸う」

「しんどいから大きく息を吸って元気を出そう」——低気圧の日にやりがちなことですが、
これが逆効果になることがあります。
すでに内側から膨らもうとしている身体に、さらに空気を入れてしまうから。

まず、吐く。吐き切る。
それだけで、芯が戻ってきます。

しっかり息を吐くと、横隔膜が上に引き上げられ、胴体に縦の張りが生まれます。
膨らんでいた身体が内側からきゅっと引き締まる。
冒頭でやってもらった、あの感覚です。

逆に高気圧の日は、外から押されて身体が凝縮しやすい。
このときは吸う呼吸で内側から押し返す。
胸郭に空間を作り、縮こまった身体に余白を戻す。
気圧の変化に合わせて、呼吸の方向を変える。
それだけで、身体の対応がまるで違ってきます。

Breath 03 | 次に雨が降ったら、これだけやってみる

吸わなくていいです。まず、全部吐く。

吐き切ったら、自然に入ってくる空気に任せる。

それを3回。

背中の下が、少しだけゆるんだ感覚があれば——バルブが動き始めています。


気圧に振り回されない身体とは、気圧を感じなくなることじゃない。

変化を受け取って、うまく逃がせること。
完璧に閉じた容器より、少し「逃げる余地」のある容器のほうが、圧の変化に強いように、
身体もそう設計されています。
呼吸はその、いちばん手近な入口です。

そして、低気圧の日に「ぼんやりして動き出せない」ときは、鼻から短く吸うスニッフィングの呼吸が助けになることもあります。
でも、身体が張っている、背中が重い、深く吸おうとすると苦しい——そんな日は、先に吐く。
起こしたいときは短く吸う。逃がしたいときは、吐く。
呼吸は、その日の身体に合わせて入口を変えていいのです。

次の雨の日が、少し違って感じられるといいなと思います。

▶スニッフィングでスイッチをONにするにはこの記事を参考にしてください

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。
また、公式LINEでは、
いつでも身体に戻るきっかけを用意していますので、必要なときに、思い出していただけたらうれしいです。

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