呼吸を意識すると、身体は変わる? 腸と自律神経に起きている、静かな変化

呼吸が浅い気がする。
深く息が吸えない。

そんな感覚を持ったことはありませんか。

呼吸が大切だということは、
多くの人が知っています。

けれど実際には、
「どう呼吸すればいいのか」
「深く吸わないと意味がないのか」
そんなふうに迷っている人も少なくありません。

呼吸を意識してみたけれど、
身体が変わった実感がよくわからない
そんな経験をしたことがある方もいるかもしれません。

この記事では、
呼吸をがんばって整える方法ではなく、

・呼吸とは何か
・どこが動くと身体に影響するのか
・その動きが腸や自律神経にどう関わっているのか

を、できるだけシンプルに整理します。

がんばらなくていい。
でも、少しだけ意識して取り入れてみる。
そんな距離感で読んでいただけたら十分です。

呼吸とは、意識と無意識をつなぐ動き。
まずは、身体の内側で何が起きているのかを見ていきましょう。

目次

呼吸を意識しても「変わらない」と感じる理由

呼吸を意識してみても、
「思ったほど変化を感じない」
そう感じることは、決して珍しいことではありません。

それは、呼吸が身体に影響していないからではなく、
影響の現れ方がとても静かで、感覚にのぼりにくいからです。

私たちはつい、
深く吸えたかどうか、
リラックスした感覚があったかどうか、
といった「分かりやすい変化」を探してしまいます。

けれど、呼吸による変化は、
まず腸の動きや自律神経の切り替えといった、
意識の外で起きる反応として始まります。

たとえば、
腸の緊張がわずかにゆるむ、
呼吸のリズムに合わせて内臓の動きが揺れ始める。
その変化は小さく、
すぐに「気づき」として現れないことも多いのです。

だからこそ、
「変わらない」と感じることは、
失敗でも、やり方が間違っているわけでもありません。

呼吸で起きる変化は、
何かを足すというより、
身体がもともと持っている調整の力が、
邪魔されずに動き出す
ような変化です。

感じ取ろうとしなくても、
コントロールしようとしなくても、
内側では、すでに静かな反応が始まっています。

呼吸とは、意識と無意識をつなぐ動き

呼吸は、当たり前だけれど、空気を吸って吐くこと。
でも、それだけでなく、身体の中では同時に、

  • 肋骨が動き
  • 横隔膜が上下し
  • お腹の内側に圧が伝わる

という動きが起きています。

呼吸の大きな特徴は、
自分で意識して変えられるけれど、
放っておいても続いている
という点です。

心臓や腸の動きは基本的に無意識ですが、
呼吸だけは、意識と無意識のあいだにあります。

だから呼吸は、
身体の状態を感じ取り、
内側に働きかけるための
入り口になりやすい動きなのです。

呼吸は「深さ」より「どこが動くか」

呼吸というと、
「深く吸うこと」が大切だと思われがちです。

けれど実際に身体に影響するのは、
どれだけ吸ったかより、
どこが動いているか
です。

無理に深呼吸をすると、
かえって肩や首に力が入り、
呼吸が固くなることもあります。

大切なのは、
呼吸によって身体の中に
自然な動きが起きているかどうか。

その動きをつくっているのが、
呼吸筋です。

胸式呼吸と腹式呼吸は、自然に混ざっている

ここでよく出てくるのが、
「腹式呼吸と胸式呼吸はどちらがよいのか?」
という疑問です。

実際には、人は普段から
この二つをきれいに分けて使っているわけではありません。

肋骨の動きが目立つときもあれば、
お腹の動きが目立つときもある。
状況に応じて、その比重を自然に変えながら
呼吸しています。

大切なのは、
どちらを選ぶかではなく、
呼吸によって身体の中に動きが起きているかどうかです。

この記事では、
肋骨や横隔膜の動きが分かりやすい
胸式呼吸の視点から話を進めます。

▶胸式呼吸と腹式呼吸の役割についてはこちらをどうぞ。

▶また、呼吸は1日の中で役割が変わることについても書いています。


呼吸は「筋肉の動き」でできている

呼吸を支えている主な筋肉は、

  • 横隔膜
  • 肋間筋
  • 腹部の筋肉(補助的に)

です。

この筋肉たちが連動して動くことで、
呼吸は成立しています。

呼吸が浅くなっているとき、
空気が足りていないというよりも、
これらの筋肉の動きが小さくなっている
ことが多くあります。

呼吸を意識している女性の画像

呼吸筋が動くと、腸にどう伝わる?

横隔膜が下がり、
肋骨が広がると、
お腹の内側にはスペースが生まれます。

吐くときには、
肋骨が戻り、
横隔膜が上がり、
内臓がやさしく押されます。

この圧の変化が、
腸にとっては
内側からの穏やかな刺激になります。

やさしくマッサージされているような、
揺らされる感覚です。


呼吸が浅いとき、腸が静かになる理由

呼吸筋の動きが小さい状態が続くと、
お腹の内側の圧の変化も少なくなります。

すると腸は、
「今はあまり動かなくていい」と判断します。

お腹の張りや重さは、
腸が悪いわけでも、
怠けているわけでもありません。

身体全体の状態を反映した、
自然な反応とも言えます。

▶腸についてこちらの記事で書いています


自律神経は、そこで何をしている?

自律神経は、
身体に命令を出す存在というより、
状態を見て調整する役割を担っています。

呼吸筋の動きやリズムを通して、
「今は緊張しているのか」
「少し休めそうか」
といった情報を受け取り、
内臓の働き方を調整します。

呼吸がセルフケアの入り口になりやすいのは、
意識と無意識の両方に関わっているからです。

▶呼吸と横隔膜が神経の働きにどう影響するかは、
姿勢が整うと、なぜ迷走神経は働きやすくなるのか をご覧ください。


がんばらなくていい、呼吸の取り入れ方

ここで紹介する呼吸は、
トレーニングではありません。

取り入れるなら、
この3つだけで十分です。

  • 時間を決めない
  • 回数を決めない
  • できたかどうかを評価しない

    毎日気づいたときにで大丈夫。

なんだか、無責任な感じがするかもしれませんが、あまり色々決めすぎると身体が硬くなるからです。
最初はただ、呼吸を感じるだけで十分です。


思い出しやすいタイミング

  • 朝、起き上がる前
  • トイレのとき
  • 信号待ち
  • 布団に入ったとき

そのときに、
1呼吸だけ
肋骨が広がって戻る感覚を感じられたら、それでOKです。
まず、呼吸する筋肉を意識してみる事です。

状態別:こんなときは、こう考える

緊張や不安が強いとき

呼吸を整えようとせず、肋骨を広げる事には意識を向けずに、
ただ、吐くことに意識を向けて。
吐く息が、少し長くなってきたら十分です。

吐き切って、何も考えずゆっくり吸いましょう。
息を吐き切ると自然に吸い込むことができます。

お腹が張る・動きにくい感じがするとき

お腹を操作しようとせず、
肋骨が動いているか、だけに注意を向けます。

肋骨を広げてゆっくり吸うことを意識して。肩の力は抜いてくださいね。
それから自然にしっかり吐き切ると、ちょっとした内臓のマッサージになります。

疲れているのに眠れないとき

力を抜いて、自然の呼吸に任せます。
数えない、整えない。
「出入りしているな」と感じるだけで大丈夫です。

まとめ

呼吸は、整えるものではなく、
身体が戻るためのきっかけです。

少し意識すると、
呼吸筋が動き、
その動きが腸に伝わり、
自律神経が静かに調整を始めます。

がんばらなくていい。
でも、思い出したときに少しだけ。

今日の呼吸が、
明日の身体を支えていきます。

▶このサイトが呼吸や姿勢を大切にする考え方を書いている記事です。

▶ピラティスは、この呼吸筋を意識しながらインナーマッスルを鍛えて、体幹を鍛えるエクササイズです。
また、姿勢の悪さも呼吸に影響することがあります。
興味のある方は胸式呼吸と姿勢の関係の記事もご覧ください

大きな動きからではなく、小さな動きから始める方法もおすすめです。
家でほんの少し呼吸を意識して、身体を動かしてみる。
これも立派なピラティスだと思っています。


姿勢や呼吸がうまくいかないのは、あなたの努力不足ではありません。
身体が安心して動ける条件が、まだ整っていないだけです。
まずは入口の記事から、呼吸と身体の土台を作り直してみてください。

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、40代からのしなやかな心身を作るために、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。

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