筋トレは、実は脳トレでもある

最初に変わるのは、筋肉じゃない。

運動を始めたばかりの頃、
「まだ筋肉はついていないはずなのに、少し楽になった」
そんな感覚を覚えたことはありませんか。

あるいは、
「動いているのに、効いている感じがしない」
「これで合っているのか分からない」
そんな不安を感じたことがあるかもしれません。

けれど実はそれは、
失敗でも、気のせいでもありません。

筋肉そのものが変わる前に、
脳と神経が、身体の使い方を学習し始めている
とても大切な段階なのです。

筋トレは、
筋肉だけを鍛えるものではありません。
実は同時に、脳を育てる時間でもあります。


脳と筋肉がつながっているイメージ画像
目次

筋肉は、脳と神経の「司令」で動いている

私たちの筋肉は、
自分の意思だけで自由に動いているわけではありません。

  • どの筋肉を使うか
  • どれくらいの力で使うか
  • どの順番で働かせるか

これらを決めているのは、すべて
脳と神経の司令です。

運動を始めたばかりの頃や、
久しぶりに身体を動かすとき、
この司令はまだ整理されていません。

そのため、

  • 必要以上に力が入る
  • 関係のない筋肉まで一緒に頑張ってしまう
  • 動きがぎこちなく感じる

といったことが起こります。

これは筋力不足というより、
「使い方を思い出している途中」なのです。

▶どうして思い出さないといけなくなるのか、脳が身体をどう認識するかについてはこちら


なぜ、筋肉が変わる前に楽になるのか

運動を始めてすぐに起こる変化の多くは、
筋肉が太くなったからではありません。

  • 神経のつながりが少しずつ整理され
  • 必要な筋肉に、必要なだけ司令が届き
  • 余計な力が抜けていく

その結果として、

  • 動きが軽くなる
  • 姿勢が安定する
  • 疲れにくく感じる

こうした変化が現れます。

つまりこの時期に起きているのは、
筋肉の変化ではなく、使い方の学習です。

だから、
「効いている感じがしない」
「手応えがない」
と感じることがあっても、不思議ではありません。

身体の中では、どんな学習が起きているのか

──筋トレが「脳トレ」と言われる理由

運動を始めたときに起こる最初の変化は、
筋肉が太くなることではありません。

実はその前に、
脳と神経の働き方が変わり始めています。

私たちの身体では、

  • 脳が「動かそう」と決め
  • 神経を通して信号を送り
  • 筋肉がそれを受け取って動く

という流れが、常に起きています。

けれど、普段あまり使っていなかった筋肉や、
久しぶりに動かす動きでは、

  • どこに信号を送ればいいか
  • どれくらいの強さが必要か

を、脳がうまく判断できません。

筋肉が動かないのは、弱いからではない

「力が入らない」「効いている感じがしない」とき、
私たちはつい、

  • 筋力が落ちている
  • ちゃんと使えていない

と思いがちです。

けれど実際には、

脳が、正しい司令の出し方を学習している途中

であることがほとんどです。

この段階では、

  • 信号はとても弱く
  • 動きは小さく
  • 感覚もはっきりしません

でもこれは、
間違いではなく、必要な過程です。


神経の「通り道」が整うと、身体は楽になる

運動を繰り返すうちに、

  • どの筋肉を使うか
  • どこは使わなくていいか

が、少しずつ整理されていきます。

すると、

  • 余計な力が抜け
  • 同じ動きでも楽に感じ
  • 姿勢や動きが安定する

といった変化が起こります。

このとき、
筋肉の大きさはほとんど変わっていません。

変わっているのは、
脳と神経の司令の精度です。

だから、筋トレは
筋肉を鍛える運動であると同時に、
脳と神経を育てる「脳トレ」でもあるのです。


リハビリの中で、いま身体が学習していること

私自身、現在リハビリの過程にあります。

脳から指令は出ているのに、
その先の筋肉まで情報がうまく届かず、
どう動いたらよいのか分からなくなっている状態です。

けれどリハビリの中で、
「ここを動かすのだよ」と、
リハビリの先生がその筋肉の場所を軽くたたいたりしながら、
身体に思い出させるような訓練をしています。

その感覚が少しずつ分かってきても、
すぐに動けるようになるわけではありません。
ただ、どこが動くはずなのかが、
ほんのかすかに分かるようになってきました。

そして、これを繰り返して、
少しずつ筋肉がついてくるのです。

「何も起きていない時間」は、準備の時間

強く動かせないとき、
身体の中では何も起きていないように感じるかもしれません。

けれど実際には、
脳と神経が
「どう動かすか」
「どこに司令を出すか」
を探している時間が、静かに流れています。

うまくできない。
効いている感じがしない。

それは後退ではなく、
次に進むための準備

力を出す前に、
まず司令が整う必要があります。

その順番を、
頭で理解するより先に、
今、身体で学んでいるのだと思います。

筋トレは、なぜ「脳トレ」なのか

筋肉を鍛えるということは、

  • どこを使うのか
  • どれくらい使うのか
  • どこは休ませるのか

を、脳が学び直すことでもあります。

だからこそ、

  • 動きが小さくても
  • 効いている感じが薄くても

身体の中では、
確かな変化が積み重なっている

筋トレは、
筋肉を追い込む時間ではなく、
身体との連絡を取り戻す時間でもあるのです。


まとめ|Inner Awaking 的な視点

最初に変わるのは、筋肉ではありません。

変わるのは、
脳と神経の司令の通り道

うまくできない時間も、
感じにくい時間も、
すべては学習の一部です。

焦らなくて大丈夫。
身体は、ちゃんと覚えています。

また、呼吸に意識を向けることに慣れてくると、
「この感覚のまま、少し動いてみたい」
と感じる瞬間が出てくるかもしれません。


姿勢や呼吸がうまくいかないのは、あなたの努力不足ではありません。
身体が安心して動ける条件が、まだ整っていないだけです。
まずは入口の記事から、呼吸と身体の土台を作り直してみてください。


身体の変化を「部分」ではなく「全体の連携」として捉え直したい方は、
身体は、思っているよりずっと協力し合っているもあわせてどうぞ。

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、40代からのしなやかな心身を作るために、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。

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