「すぐ下痢になる」のが当たり前だった私が、腸の声(サイン)を聴けるようになるまで

「私は胃腸が弱い体質だから、仕方ない」 ずっとそう思って生きてきました。

朝ご飯を食べると大抵、通勤電車を途中下車しなければならなかった20代の会社員時代。
大事な会議の前、楽しみな旅行の朝。いつも頭のどこかでトイレの場所を探している……そんな毎日が私にとっての「普通」でした。

30代になっても、食べ過ぎや飲み過ぎで翌朝トイレにこもる生活は変わらず。
40代では子宮内膜症や帝王切開の影響か、生理前の便秘と下痢を繰り返す日々。
そして50代。子育てが一段落し、ようやく自分に目を向け始めた矢先に
告知されたのは「乳がん(ステージ3)」でした。

目次

絶望の中で出会った「見えない力」

生存率50%。運命を神様に預け、抗がん剤治療と手術に耐える日々。
それでも仕事をしながら生きる中で、私はそれまで追いかけてきた「見えるもの」よりも、自分を生かしてくれている「見えないもの」——つまり、身体の中で働く菌たちの力に魅了されるようになりました。

そこから私の「菌活」が始まりました。
自家製酵母でパンを焼き、麹や味噌を手作りする。それでもまだ、大好きなお酒はやめられず、
本当の意味での「腸活」には程遠い状態でした。

65歳、自由を失って知った「出す」有難さ

転機は65歳で発症した「ギラン・バレー症候群」でした。
1年9ヶ月に及ぶ入院生活。当初は腹圧さえかけられず、
3日に一度の浣腸と摘便。リハビリに明け暮れる毎日の中で、
看護師さんの「今日はお通じありましたか?」という問いかけが、何より重く響きました。

少しずつ、少しずつ。 介助を受けてトイレへ行き、
やがて自分の力でお手洗いに行けるようになったとき。
その当たり前の行為の有難さを、私は心の底から噛み締めました。

「便」という字が教えてくれたこと

ある朝、お通じを済ませた後に明るい朝日を浴びて、ふと気づいたことがありました。

「便」という字は、人偏に「更(さら)」と書く。

朝、光を浴びて、不要なものを出す。そうすることで、心身が「更(さら)」になり、
また新しい一日が始まる。 「ああ、お通じを出すことは、一日を更新することなんだ」
その事実に、言葉にできないほどの感動を覚えたのです。

身体と仲直りしたら、心が穏やかになった

退院後、松葉杖をつきながら、私は自分の身体と丁寧に向き合い始めました。 時間栄養学を意識し、タンパク質をしっかり摂り、生活のリズムを整える。すると不思議な変化が起こりました。

「あれ? 私、なんだかすごく落ち着いている」

現役で働いていた頃は、怒りをパワーにして生きていました。
それが自分らしさだと思っていました。けれど今、私はかつてないほど穏やかです。

呼吸の力や内臓ネットワークという視点に出会い、付き合い方を変えた今、ようやく分かりました。
腸は私を困らせようとしていたのではありません。
「もう無理だよ」「こっちを向いて」と、精一杯のサインを送り続けてくれていたのです。

身体との会話を始めてみませんか

私たちは皆、毎日を一生懸命に生きています。余裕なんてないかもしれません。
けれど、ほんの少しだけ、自分の身体の声に耳を澄ませてみてください。

自分のリズムを知り、癖を知り、無理をせずに対話を続けてみる。
そうすることで、心にも体にも優しい時間が、きっと手に入るはずです。

今回の体験を通じて私が学んだ「身体の仕組み」や「具体的な整え方」については、
以下の記事でも詳しくお話ししています。

あなたの身体という「かけがえのないチーム」と仲直りするための、ヒントになれば幸いです。

[内臓ネットワークの入り口] [身体は、思っているよりずっと協力し合っている]――私のリハビリ生活を支えてくれた、身体の連携についての物語です。

[光とお通じの深い関係] [私たちの身体はどうやって朝を知るのか] ――朝日を浴びることが、なぜ「一日を更新する(便)」ことにつながるのかを解説しています。

[心と腸のつながりを知る] [脳で作られるセロトニンと腸で作られるセロトニンの違い] ――「なぜか穏やかになった」理由。腸の状態が心に届くメカニズムについて。

▶[今日からできる具体的なリズム作り] [忙しい毎日のなかで整える時間栄養学] ――私が退院後に実践している、食事の「タイミング」の整え方です。


この記事は、内臓ネットワークの中の「ひとつのパート」です。
全体のつながりや流れを知りたい方は、完全ガイドをご覧ください。

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。しかし、長年培ったピラティスと神経系の知見を自らに注ぎ込み、再び装具をつけて少し歩けるまで回復しました。

現在は「3年後に独歩」を目標に自ら身体を再構築しながら、40代からのしなやかな心身を作るために、呼吸を通して身体と会話しながら整える方法を発信しています。

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