首や肩がいつも凝っている。 深呼吸しても、なんだか胸が重い。
「呼吸が浅いですよ」と言われたことがある。
そんな方に、少し聞いてみたいことがあります。
その首や肩の筋肉、責めていませんか。
実は、その筋肉たちは悪者ではありません。
呼吸が浅くなったとき、本来の担い手である横隔膜や肋間筋が十分に動けなくなると、
身体は助けを求めます。
そのサインに応えて、懸命に働き始めるのが、首・肩・胸の上部の筋肉たちです。
しゃしゃり出ているように見えて、ただ「必要とされたから」動いていた。
あなたの呼吸を守ろうとして、ずっと頑張っていたのです。
私自身、今もそれを毎日体験しています。
ギラン・バレー症候群からのリハビリで歩く練習をするとき、頑張ってしまう筋肉があります。
本来動くべき筋肉がまだ眠っているから、別の筋肉が「私がやります」と出てくる。
その健気さに、何度も胸が熱くなりました。
だからこそわかります。その筋肉たちに必要なのは、叱ることではありません。
眠ったままの筋肉を、もう一度呼び起こすこと。
「もう大丈夫、あとは任せて」と、本来の担い手にバトンを渡すことです。
呼吸の仕方を変えることで、その「バトン渡し」が起きます。
力で変えようとするのではなく、感じることから始める。
それがこの記事でお伝えしたいことです。
なぜそれが起きるのか
では、どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。
身体は、「できるだけ楽に、効率よく動く」という性質を持っています。
本来働くべき筋肉が、うまく動かなくなっているとき、
脳はその動きを止めるのではなく、
「今使える筋肉」を使って動きを成立させようとします。
つまり、動ける筋肉が“代わりに引き受ける”のです。
これは異常なことではなく、
身体があなたを守ろうとする、ごく自然な反応です。
ただその状態が続くと、
本来の役割を持つ筋肉はさらに使われなくなり、
代わりに働いている筋肉に負担がかかり続けてしまいます。
その結果として、
「しゃしゃり出ているように見える筋肉」が生まれるのです。
しゃしゃり出る筋肉の正体
しゃしゃり出る筋肉とは、本来働くべき筋肉が動きにくくなった時に、そこを肩代わりして動かすことをする筋肉です。

どうしてこういう表現になったかというと、ピラティスを始めた頃、自分ではその筋肉を使うつもりがないのに、その筋肉が動いてしまう経験をして、とても邪魔くさく、「今、あなたの出番ではないのよ。しゃしゃり出ないで」と思ったからです。
特にしゃしゃり出やすい筋肉
本来の役割を超えて働きすぎたり、姿勢を維持するために常に緊張を強いられたりする筋肉です。
- 僧帽筋(上部)
-
肩甲骨の安定性が低いと、腕を上げる際に肩をすくめるようにして働いてしまいます。
- 腰方形筋・多裂筋
-
体幹(インナーユニット)が弱いと、脊柱を支えるためにこれらの背部の筋肉が過剰に緊張し、腰痛の原因になります。
- 大腿筋膜張筋 (TFL)
-
中殿筋が弱い場合、歩行時や片脚立ちの際に股関節を安定させようと過剰に働きます。
- 大腿四頭筋(特に大腿直筋)
-
股関節のインナーマッスル(腸腰筋)や臀筋が使えていないと、脚を上げる動作や歩行で「前もも」ばかりが発達しやすくなります。
引っ込みやすい筋肉
本来主役として働くべきなのに、スイッチが入りにくくなっている筋肉です。
- 腸腰筋(股関節の深層筋)
-
股関節の安定に不可欠ですが、表面の大腿直筋などに動きを乗っ取られがちです。
- 中殿筋・大殿筋
-
現代人の生活(座りすぎなど)により「眠った状態」になりやすく、その分を腰や太もも外側の筋肉が代償します。
- 前鋸筋
-
肩甲骨を肋骨に引きつける重要な筋肉ですが、僧帽筋上部が強すぎると機能不全に陥り、翼状肩甲のような状態を招きます。
- 腹横筋
-
体幹の最も深層にありますが、ここが働かないとアウターマッスル(腹直筋や腰の筋肉)が無理に体を支えることになります。
これらの筋肉以外にも“引っ込んでしまった筋肉”の多くが、
背中側に集まっています。
背中は自分では見えにくく、日常でも意識されにくい場所です。
そのため、呼吸や姿勢に関わる大切な筋肉ほど、
知らないうちに働きにくくなっていることがあります。
▶︎ 背中は「忘れられた呼吸の場所」―気づいて取り戻す方法

でも、その筋肉は悪者じゃない
体は「最も楽に(最小限の努力で)動く」という性質を持っています。
特定の筋肉が硬くなっていたり、脳からの指令が届きにくくなっていたりすると、
近くにある使いやすい筋肉(アウターマッスル)が動員されます。
しゃしゃり出る筋肉たちは脳から指令を受け、自分の本来の仕事に加えて、
弱った筋肉の代わりをしようと一生懸命頑張っていたのです。
だから、それらの筋肉を責めるのではなく、まず感謝する。
「ありがとう、もう大丈夫」と伝えるように、本来の担い手を呼び戻すことが、
本来の動きを取り戻す方法なのです。
今私はリハビリの真っ最中ですが、毎日強くアピールする筋肉に隠れている筋肉を動かす練習です。
それはとても地味な運動なのです。
こんな動きで良いのかしら?という動き。
でも少し続けると、本来動くべき筋肉の辺りが少しくすぐったくなります。
私の場合、それが合図です。
そして、何度も何度も繰り返し、ほんの少しずつ筋肉が強くなっているのです。
引っ込んだ筋肉を目覚めさせる
まず、一番初めに目覚めさせたい筋肉は、浅い呼吸によって引っ込んだ筋肉たちです。
首や肩がつらい原因の一つだからです。
特に体幹深層と言われるインナーユニットの、
横隔膜と腹横筋は天然のコルセットと呼ばれていますが、
浅い呼吸によって動きにくくなります。
加えて肋骨の筋肉が動きにくくなると、
肺を広げるために様々な首の筋肉や肩の筋肉が動員され、
さらに本来の動きに支障が出てくるのです。
そして、弱った筋肉からの情報が減ると、
脳の中のボディマップは少しずつぼやけていきます。
そして脳は、より迅速に動ける筋肉に任せてしまいます。
なので、このように頑張っている筋肉たちに「もういいよ」と伝えるには、
これらの弱った筋肉が「ここにいるよ」「動けるよ」という信号を脳に送る必要があります。
ただ、横隔膜・肋間筋は命令では動きません。
深い呼吸という“状態”になることで、自然に動き始めます
でも「正しく呼吸しよう」と頑張るほど、
しゃしゃり出る筋肉がさらに活躍してしまいます。
大切なのは、呼吸と身体に意識を向けて、力を入れずにただ感じること。
これが引っ込んだ筋肉を呼び起こす方法の一つです。
▶ボディマップ(身体地図)とは

呼吸の仕方で変わる
では、深い呼吸を体験してみましょう。
マットに仰向けになり膝を立てます。
横になれないなら椅子に腰かけて、少しだけ背筋を伸ばしましょう。
吐けるところまで吐いたら少しだけ次の呼吸を待ちます。
ゆっくりと自然に任せて息が入ってくるのを感じます。
余裕があれば背中が膨らむのをイメージしましょう。
この呼吸を2~3回繰り返します。
呼吸を感じることができれば十分です。
※もし一人で感じるのが難しいときは、
音声で呼吸をたどる方法もあります。
記事下からLINEへ登録できます。
まとめ|身体への信頼
しゃしゃり出ていた筋肉が静かになるとき、
それは「もう安心だよ」と身体が感じたサインです。
浅い呼吸で硬くなった筋肉たちの情報は、脳に緊張をや不安を伝え、
今は少し危険な状態と判断させ、自律神経が働きすぎてしまいます。
肋骨が広がり、横隔膜が良く動くと、脳は安心を受け取ります。
脳は経験も参考にするので、直ぐに切り替わることはしませんが、
何度も繰り返し安心な呼吸を届けることで、
頑張りすぎる筋肉は、少しずつその役割を手放していきます。
呼吸は、意識と無意識の両方にまたがる数少ない働きで、
脳に安心を伝えられる大切なスイッチなのです。
呼吸は、身体と心をつなぐ静かな入り口でもあります。
▶︎ 呼吸を変えると、なぜ思考まで変わるのか


