早く変わりたい私たちと、ゆっくり変わる身体

「どれくらいで変われるでしょう?」
レッスンをしていると、ときどきこう聞かれます。「何回くらいで?」
「どれくらいで楽になりますか?」その気持ちは、とてもよくわかります。

ピラティスには、10回で気分が変わり、20回で見た目が変わり、30回で新しい身体になる、という有名な言葉があります。
でも私は、その回数だけでは測れないと思っています。

身体に痛みや不調があれば、一日でも早く楽になりたい。
せっかくレッスンに通うのなら、いつ頃変化が現れるのか知りたい。
それは決して悪いことではありません。

ただ、それは日常での意識の向け方や回数に大きく依存するので、人によって効果の出方は変わってきます。
そして何より時間が必要なのです。

目次

早く答えが出ることに慣れた私たち

わからないことがあれば、すぐに検索できます。

長い動画も倍速で見ることができます。
要点だけをまとめた情報もあります。

買い物も、以前よりずっと早く届くようになりました。
「待つ時間」は、少しずつ減っています。

限られた時間を大切にすることは、もちろん悪いことではありません。
けれど、すぐに答えが出ることに慣れていると、身体にも同じことを求めたくなります。

何回やれば変わるのか。
いつになったら楽になるのか。
もっと早く変わる方法はないのか。

でも、身体には少し違う時間が流れています。


身体は、情報のようには変わらない

動画なら、倍速で見ることができます。
本なら、要約を読むことができます。

でも、自分の身体の動き方を倍速で身につけることはできません。
なぜなら、身体の癖は「知識」ではなく、毎日の繰り返しの中で作られてきたものだからです。

気がつくと肩が上がっている。
座ると、いつも同じ側に体重をかけている。

歩くとき、片方の足ばかりに頼っている。
緊張すると、呼吸が浅くなる。

こうしたことは、一日や二日で身についたものではありません。
長い時間をかけて、身体が「これがいつものやり方」と覚えてきたものです。
そして、それに気づくこともなくなっているからです。

だから、新しい動きを覚えることにも、やはり時間が必要になります。

レッスンは、何のためにあるのか

レッスンはとても大切です。
一人では気づきにくい身体の癖に気づくことができます。

「こう動くと楽なんだ」という新しい感覚を知ること。
自分の身体を、いつもとは違う角度から感じてみること。
それがレッスンの大きな役割だと思っています。

でも、レッスンは1週間、1か月の中のほんの一部です。

残りの時間には、いつもの座り方があり、
いつもの歩き方があり、いつもの呼吸があります。

だから、レッスンで新しい感覚を見つけたら、それを日常に少し持ち帰る。
それがとても大切になります。

レッスンで気づく。
   ↓
日常で思い出す。
   ↓
またレッスンで確かめる。

この繰り返しの中で、少しずつ身体の使い方が変わっていきます。


変わるために必要なのは、頑張ることではない

「では、毎日運動しなければいけないのでしょうか?」
私は必ずしもそうではないと思っています。

・毎日30分運動する。
・毎日ストレッチをする。
・毎日正しい姿勢を意識する。

それを頑張り続けることは、忙しい毎日の中ではなかなか難しいものです。

KeepFitで大切にしたいのは、もっと小さなことです。

たとえば、
信号を待っているときに、足の裏を感じてみる。
パソコンをしていて、「肩が上がっているな」と気づく。
歩いているときに、右と左の足の感覚が違うことに気づく。
息を吐いたときに、お腹や脇腹が少し動くことを感じてみる。

ほんの数秒で良いのです。大切なのは、正しく直すことより、まず気づくことです。

私は朝、鏡を見ながら胸を開いてみたり、歩きながら背中に呼吸を入れてみたり。
PCに向かいながら「おっと丸まっている。顎が出てた」なんて気づいてみたり。
始めた当初は何が正解かがわからずに、でも癖には少し気づけ始めていました。

気づいたら、すぐに直さなくてもいい

「肩が上がっている」

そう気づいたとき、すぐに肩を下げようとしなくても大丈夫です。
どの筋肉を動かしたらよいかわからないのに直そうとすると変な力が入ってしまいます。

「今、私は肩に力が入っているんだな」
まずは、それを知る。

右の足にばかり体重をかけているのに気づいたら、
「あ~なるほど。いつもの私は、こっちに乗りやすいんだな」と感じてみる。

身体の変化は、

気づく

直す

だけではありません。

気づく

感じる

少し試してみる

また元に戻る

もう一度気づく

この繰り返しです。

元に戻ることも、失敗ではありません。
むしろ、「また元に戻った」と気づけたなら、それは以前とは違うことです。

今までなら気づかずに繰り返していたことに、自分で気づけるようになっている。

それも、すでに変化のひとつです。

身体は、少しずつ「自分のもの」になっていく

レッスンを続けていると、最初は私が声をかけないと気づけなかったことを、自分から感じられるようになる方がいます。

「今日はこっちが硬い気がします」
「今日は呼吸が入りにくいですね」
「歩くとき、右と左が違うことに気づきました」

私は、こういう変化がとても大切だと思っています。

見た目が大きく変わることだけが変化ではありません。
できなかった動きができるようになることだけが進歩でもありません。

自分の身体のことが、少しわかるようになる。

それは、身体との関係が変わってきたということです。
誰かに「こうしてください」と言われなくても、自分で少し感じられるようになる。

そのとき、身体は少しずつ自分のものになっていきます。


早く変わりたい私たちと、ゆっくり変わる身体

私たちは、早く答えを知りたい。
早く結果を出したい。
できれば、無駄な時間は使いたくない。

そんな時代に生きています。

だから、ゆっくり変わる身体に焦りを感じるのも自然なことなのだと思います。
でも、身体は機械のように一度で更新することはできません。

今日の小さな気づき。
明日、もう一度思い出すこと。
忘れてしまって、また気づくこと。

その繰り返しが、少しずつ身体の中に残っていきます。

早く変わることを目指すより、
今日は自分の身体に、何をひとつ気づけただろう。
そんなふうに考えてみる。

それだけでも、身体との付き合い方は少し変わるかもしれません。

身体は倍速では変わりません。
時間が必要なのです。

時間を味わいながら気づいていく日常へ

最近は、圧力鍋やレンジでチンするだけで、短時間に料理ができるようになりました。
忙しい毎日の中では、とても便利です。

でも、コトコト煮たスープには、時間をかけたからこそ出てくるうまみがあります。
火にかけたら、ただ待っているわけではありません。

ときどきふたを開けて、様子を見る。
火が強すぎれば少し弱める。
味をみて、必要なら少し整える。

身体も、それに少し似ているのかもしれません。
毎日ずっと身体を意識し続ける必要はありません。

ときどき、自分の身体の様子をのぞいてみる。
「あ、今日は少し肩に力が入っているな」
「今日は呼吸が浅いかもしれない」
そんなふうに気づいてみる。

必要なら少し動いてみる。
そして、また日常に戻る。
身体を変えることも、一度に何かをやり切ることではないのかもしれません。

自分の身体を、少し時間にゆだねてみる。
ゆっくり変わるからこそ、その変化は日常の中に残っていくのだと思います。

KeepFitのレッスンも、50分の中だけで身体を変える場所ではありません。
レッスンで見つけた小さな感覚を持ち帰り、日常の中で何度も思い出す。

そしてまたレッスンで、自分の身体を確かめる。
その繰り返しの中で、
「いつの間にか前より楽になっていた」
そんな変化が、少しずつ育っていくのだと思います。

自分の身体を感じるためには、まず「自分の身体をどのようにイメージしているか」も関係しています。
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プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。
そこから、長年学んできたピラティスと身体・神経の知識を自分自身にも向けながら、現在は装具をつけて少しずつ歩く練習を続けています。

目標は、3年後にもう一度、自分の足で歩くこと。

Inner Awakingでは、呼吸と小さな動きを通して、身体と会話しながら整えていく方法を発信しています。

公式LINEでは、必要なときに身体へ戻るきっかけもお届けしています。

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