内ももが働くと、身体は少し安定する|内転筋とハムストリングの関係

目次

はじめに


リハビリの先生からは、以前から「内転筋がかなり弱いですね」と言われていました。
それなのに私は、なぜか内転筋を鍛えようとは思ってきませんでした。
体幹やお尻の筋肉ばかりに意識が向いていたからです。

でも1週間前、「ピラティスリングで筋トレできるじゃない」とあらためて気づいてから、内転筋の筋トレを開始。

正直、内転筋は「脚を閉じる筋肉」というイメージしかなく、そこにフォーカスする必要性がピンときていなくて、重要性を理解しきれていませんでした。

でも、続けるうちに変化が現れはじめました。
驚いたのは、座骨付近のハムストリングの張りが減ったことでした。
ハムストリングの付け根の座骨下当たりが、コリコリと筋張った感じで痛くなっていたのだけれど、痛くなくなっていたのです。この部分は1年近くいつも痛い場所だったのに。

内転筋は、「脚を閉じる筋肉」だけではないと言う事を体感しました。

内転筋群とは

内転筋群は、骨盤から大腿骨へとつながる筋肉の集まりです。
大内転筋、長内転筋、短内転筋、薄筋、恥骨筋——複数の筋肉が層をなして、太ももの内側を走っています。

その働きは脚を閉じることだけにとどまりません。

  • 歩行時に脚を振り出す動作を補助する
  • 立位で骨盤を左右から支える
  • 片脚立ちのバランスを取る

つまり内転筋は、日常動作の中で骨盤の安定に深く関わっているのです。

私も内転筋を鍛え始めてから、片脚のバランスや足の振出しに少しの変化が見えています。
また、鍛える時に、体幹が起動する感覚を強く感じています。

なぜ内転筋は弱りやすいのか

現代の生活は、内転筋にとって不利な環境が揃っているのです。

要因影響
座る時間が長い内転筋が縮んだまま使われない
横方向への動きが少ない内転筋を活性化する機会が減る
お尻や太もも前ばかり使う内転筋の出番が奪われる

現代人にとって内転筋は、「忘れられやすい筋肉」なのです。

内ももの地図がぼやけると身体はどうなるのか

ここで「ボディマップ」という視点から考えてみます。

ボディマップとは、脳が持つ身体の内部地図のこと。
よく使う部位の地図は鮮明になり、使わない部位の地図はぼやけていきます。

▶詳しくはこちらの記事に書いています。

内ももは、

  • 見えにくい(自分では直接見えない)
  • 感じにくい(普段の動作で意識しにくい)
  • 使い方が分かりにくい(どう力を入れればいいか分からない)

その結果、脳の中で内ももの地図は薄れていきます。そして地図がぼやけた筋肉は、動きの中でよびだされにくくなります。
すると、代わりに膝が頑張る。ハムストリングが頑張る。腰が頑張る。と言う事が起きてきます。

ハムストリングが頑張りすぎていた。

ここで先ほど書いた、座骨近くのハムストリングの張りが、以前より減っていたという私自身の体験。

もちろん、すべての人に同じことが起こるわけではありません。
身体の状態は一人ひとり異なるし、張りの原因もさまざまです。

ただ、私の場合は、内転筋が「仕事」を思い出したことで、今まで過剰に働いていたハムストリングが、少し休めるようになったのかもしれません。

身体は仕事を分け合っている

お尻、内転筋、体幹、ハムストリング——これらはチームとして働いています。
ここが、この記事で最も伝えたいこと。

どこかが仕事を忘れると、別のどこかがその分を引き受ける。
「頑張りすぎている筋肉」がある場合、その原因は別の場所にある出番を失っている筋肉が隠れているのかもしれません。

内転筋を鍛えることは、筋力を増やすことであると同時に、お尻、体幹、ハムストリングとのチーム内のバランスを取り戻すことでもあるのです。

鍛える前に、思い出す

内転筋を「鍛える」前に、まず「思い出す」ことから始めてみてはどうでしょうか。
ボディマップを鮮明にするための小さな実践を紹介します。

ボールを軽く挟む

柔らかいボールや枕を太ももの間に挟み、軽く押す。力を入れるというより、内ももの存在を感じることが目的です。

立位で内ももを感じる

両足で立ったとき、足裏だけでなく内もも同士のつながりを意識してみる。脚が中心に向かって支え合っている感覚。

歩行中に左右脚のつながりを感じる

歩くとき、左右の脚がバラバラに動くのではなく、骨盤を介して連動していることを意識しましょう。

これらは、どれも派手なエクササイズではありませんが、脳の地図を少しずつ塗り直していく作業です。
何回も意識を向けてみることで塗りなおされた場所は、遠慮がちに動き始め、頑張りすぎる筋肉が少しずつ手を引き始めるのです。

おわりに

身体は、一つの筋肉だけで動いているわけではありません。誰かが仕事を忘れると、別の誰かがその分を引き受ける。

忘れられた筋肉を鍛えることは、筋力を増やすことだけではなく、身体の中で忘れられていた役割を思い出してもらうことなのかもしれません。

私自身、内転筋を鍛え始めたことで、身体の支え方が少し変わり始めました。
それは単に筋力が増えたというより、忘れられていた場所が身体の会議に戻ってきたような感覚です。

身体はいつも助け合っています。

もしどこかに張りや痛みがあるなら、その場所だけを見るのではなく、「誰が頑張りすぎているのだろう」「誰が出番を失っているのだろう」と考えてみるのも一つの方法かもしれません。

プロフィール

自画像イラスト

櫻井 凛
ピラティスインストラクター

寝たきりから再起。呼吸と身体を再構築する伴走者として

65歳でギラン・バレー症候群を発症し、一時は寝たきりに。
そこから、長年学んできたピラティスと身体・神経の知識を自分自身にも向けながら、現在は装具をつけて少しずつ歩く練習を続けています。

目標は、3年後にもう一度、自分の足で歩くこと。

Inner Awakingでは、呼吸と小さな動きを通して、身体と会話しながら整えていく方法を発信しています。

公式LINEでは、必要なときに身体へ戻るきっかけもお届けしています。

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